求人情報の条件欄や面接の際に「試用期間」という言葉を見聞きしたことはないでしょうか?
「研修期間とは違うの?」「試用ってことは内定ではないの?」「どういう扱いになる?」など、さまざまな疑問を感じている人もいるでしょう。試用期間中の待遇や解雇のリスクがあることを知らない方も少なくありません。
そこで今回は、試用期間についての目的や待遇、期間などについて解説いたします。
試用期間とは
試用期間とは、試験的な雇用を目的として入社直後から本採用までの間に設けられる期間です。
試用期間は、雇用形態を問わず適用することが可能です。正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトとして入社するケースでも、試用期間を設けられる場合があります。
また試用期間後に、雇用形態が変更されることはありません。試用期間は、あくまでも1つの雇用契約における最初の一定期間にすぎず、「試用期間中は契約社員で、本採用後は正社員に切り替わる」といった内容での雇用契約を結ぶことは不可能です。
●試用期間を設定する目的
採用後の従業員について、能力・適性を見ることや企業との相性を確認するなど、企業がさまざまな観点からチェックを行うため、ということが試用期間を設ける最大の目的です。
応募書類を見たり面接を行ったりするだけでは、応募者のスキル・人柄をきちんと判断するのは困難です。特に、既存従業員や担当業務との相性が合うかどうかは、実際に働いてもらわなければ分かりません。
試用期間中に従業員の仕事ぶりや振る舞いを見ることで、企業は本採用しても問題ないかを判断できます。
従業員側にとっても、自分と会社との相性を実際に肌で確認することが可能です。結果的にミスマッチを減らせることが、試用期間を設けるメリットなのです。
●研修期間との違い
試用期間と研修期間はよく混同されやすいです。研修期間も試用期間と同じく、入社後に一定期間が設けられるため、違いがよく分からないという人もいるでしょう。
研修期間とは、通常業務をスムーズにこなすための知識・スキルを習得する期間のことです。最低限のビジネスマナーを学習したり、業務に必要な専門性の高いスキルを身に付けたりします。
研修期間には、従業員の能力・人柄を見る目的はありません。あくまでも、入社後の教育を目的として設定される期間です。
試用期間の長さ
試用期間の長さは、法律で決められたルールがあるわけではなく、企業によって異なります。
ただし、1年以上の試用期間を設けるのは適切ではないとされています。試用期間中の従業員は身分が不安定な状態であり、いつまでも本採用されない状況は従業員への配慮が足りないとみなされるためです。
また、業務の性質の違いを考慮し、雇用形態により試用期間の長さが変わる可能性があることも覚えておきましょう。例えば、正社員の試用期間が3か月なら、契約社員・アルバイトはより短い1か月程度に設定されるのが一般的です。
ちなみに、一般的な試用期間の長さは3か月で、企業によっては試用期間を6か月にしているケースもあります。
●試用期間の延長
状況によっては、企業側が試用期間の延長を申し出てくることもあります。企業と従業員がお互いに合意すれば、基本的には試用期間の延長が可能です。
たとえば、採用後の従業員が病気・ケガなどで長期間休んだ場合は、勤務状況の判断ができないため、延長を求められることがあるでしょう。
従業員の勤務態度に問題があるものの、解雇するほどではないケースでも、企業が試用期間の延長を提案する可能性があります。
試用期間の延長は、合理的かつ客観的な理由がある場合のみ可能です。ただし、試用期間を延長できる旨が就業規則に記載されている場合は、就業規則で決められている範囲で延長できるようになっています。
試用期間中の待遇
試用期間の目的を考えると、待遇は本採用より低くなるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか?
試用期間について法律で特にルールが定められていない以上、待遇に関しても企業が自由に決められます。
試用期間中は、本採用後の給与より低めに設定することも可能です。ただし、給与を下げる場合は、原則として地域の最低賃金以上に設定する必要があります。
また、試用期間の待遇を低くする場合は、入社後のトラブルを防ぐためにも、募集要項にその旨を記載することが求められます。試用期間があることが内定後に分かった場合は、募集要項を見て就労条件を確認しましょう。
●ボーナスは貰える?
試用期間中にボーナスが貰えるかは、企業により異なります。そもそもボーナスは、法律で支払い義務が定められているわけではありません。支払うかどうかは企業が自由に決めることが可能なのです。
ボーナスが貰えるかは、試用期間がボーナスの査定期間に含まれるかどうかによります。試用期間を査定期間に含めないルールになっていれば、ボーナスは「減額」または「無し」となります。
また、試用期間であることを理由に、ボーナスを支給しない場合もあるでしょう。いずれにしても、試用期間中にボーナスを満額もらえるケースはあまり存在しません。
●年次有給休暇はどうなる?
労働基準法で定められている「年次有給休暇の取得条件」は下記となります。
- 6か月間の継続勤務
- 全労働日の8割以上の出勤
この「6か月間の継続勤務」には、試用期間も含まれています。試用期間中も従業員として働いているとみなされるため、年次有給休暇の基準日は試用期間が始まる入社日から計算できるルールです。
また、「全労働日の8割以上の出勤」の条件に関しても、試用期間を含めた期間で割合を算出できます。
結論としては、試用期間が設けられていても、年次有給休暇は入社日からのカウントで考えることが可能です。
さいごに
いかがでしたか?
今回は、試用期間の目的と待遇、期間について詳しくご紹介しました。
試用期間とは、本採用前に企業が従業員を見定めるための期間です。一般的な試用期間の長さは、3か月とされています。場合によっては、企業から延長の申し出を受けることもあるでしょう。
試用期間中の就労条件は、企業により異なります。試用期間についてきちんと理解し、気になる点があれば内定をもらった企業にきちんと確認することをおすすめします。