試用期間の基本情報については、別途コラム『試用期間とは?基礎知識と研修期間との違いについて』で解説しました。
では、試用期間中は社会保険の適用は?試用期間中に辞められる?解雇されることもある?など、さまざまな疑問を持った方もいるでしょう。
そこで今回は、試用期間中の社会保険と解雇されるケースなどについて詳しくご紹介いたします。
試用期間中の給料や福利厚生
企業によっては、試用期間中の給与が試用期間終了後より少ない額を提示される場合があります。その際に気をつけたいのが、各都道府県の最低賃金を下回っていないかどうか?ということ。気になる場合は、給与額と試用期間の日数を用いて平均賃金を算出し、最低賃金と比較するようにしましょう。
計算式は以下となります。
試用期間中の給与額÷試用期間中の勤務時間=試用期間中の平均賃金
また、試用期間中とはいえ長期雇用を前提として採用している以上、特例(下記参照)を除き各種社会保険(雇用・健康・労災・厚生年金)への加入が義務付けられています。不確かな場合は、きちんと確認を取るようにしましょう。
以下の場合は労災保険を除き、対象外となります。
- 2か月以内の期間を定められた臨時雇用者
- 日々雇い入れられ、期間が1ヶ月以内の者
- 4か月以内の季節労働者
- 6か月以内の臨時的事業の事業所に使用される者
- 所在地の一定しない事業に使用される者
- 船員保険の被保険者
- 国保組合の事業所に使用される者
試用期間中に解雇されることってある?
労働契約を締結した従業員は、相応の理由がない限り企業側から簡単には解雇できません。
試用期間中は、「解約権留保付労働契約」とされています。いつでも解雇できる権利を、企業がとりあえず保留している状態と言えるでしょう。
しかし、試用期間中であっても、労働契約は結ばれている状態です。労働契約法第16条により、漠然とした理由では従業員を一方的かつ簡単には解雇できないのです。
■解雇が認められるケース
原則として試用期間中に解雇はされないものの、場合によっては解雇が認められることもあります。具体的なケースは以下となります。
- 担当業務を遂行する能力を著しく有していない
- 応募書類や面接で聞いていたスキルを実際には持っていない
- 職歴や学歴に重大な虚偽があった
- 「遅刻・早退が多い」「協調性がない」など勤務態度に著しい問題がある
企業が本採用を拒否する場合は、「解雇の前に指導や注意などの企業努力が行われていたか」がポイントになります。企業が努力したのにもかかわらず改善が見られない場合は、解雇の客観性を認められる可能性があるでしょう。
そのため、1・2回の遅刻や早退で何も指導や注意がなければ、解雇が認められる可能性は低いといえます。
また、特定の免許や資格がなければ業務を務められない職種で、実際は該当の免許や資格を持っていないケースも解雇が認められる可能性があります。
「資格や免許を持っていないことが内定の前に分かっていたなら採用しなかった」というような重大な虚偽申告があった場合は、解雇の客観性が認められるかもしれません。
試用期間中に退職したい場合
「実際に働いてみたらイメージと違った」「組織の雰囲気と合わない」「仕事のことを考えると憂鬱で体調が優れない」などの理由で試用期間中にやむをえず退職したいというケースも、ありえない話ではありません。
しかし、即日退職は原則NGです。正式採用ではない試用期間中だからといって、辞めたいその日に退職を申し出たり、即日退職したりということはできません。
試用期間中であっても労働契約は成立しているため、会社のルールを守った上で退職する必要があります。労働基準法では、退職予定日の2週間前に退職の申し出を行なうことが定められていますが、「退職を申し出る場合は退職希望日の1ヶ月前までに申し出ること」などの会社規定があれば、それに従わなければいけません。
「自己都合の退職であること」「明確な退職の意思があること」を意識し、退職を決意したらできるだけ早く申し出てください。
■試用期間中の退職手順
試用期間中の退職には「自主退職」と「合意退職」があります。試用期間中に辞める・退職する際は、会社がどちらの退職に区分するかによって手続きなどが異なります。
<自主退職の場合>
労働者の一方的な意思表示により退職の効力が発生するため、使用者の同意や承諾は必要ありません。退職届が使用者のもとに届き、一定期間が経過したのちに退職できることになります。この場合、退職届を撤回することはできません。
<合意退職の場合>
退職届の提出によって合意解約を申込み、使用者が受理すると退職の効力が生じます。使用者の受理前であれば、退職届の撤回もできます。
いずれにせよ、すぐに辞められるわけではないので、退職を決めたらできる限り早めに直属の上司へ伝えるようにしましょう。
事前に「ご相談があります」とアポイントを取り、上司の時間を確保してください。退職に関することは直接言いづらいかもしれませんが、意志の固さを伝えるためにも電話やメールではなく直接伝えましょう。
また、後のトラブルを避けるためにも、退職届を提出することでしっかり書面で残しましょう。企業側からの同意が得られたら、具体的な退職日を相談⇒引き継ぎに必要な時間や業務状況などを踏まえて相談⇒日にちを決定となります。
さいごに
いかがでしたか?
今回は、試用期間中の社会保険と解雇されるケース・退職したい場合について詳しくご紹介しました。
試用期間中の就労条件は、企業により異なります。試用期間についてきちんと理解し、気になる点があるなら内定をもらった企業に確認してみましょう。